グローバル化が進む現代社会において、国境を越えた資金移動の需要は年々増加しています。
移民労働者からの本国への送金・国際的なビジネス取引・海外への投資など、さまざまな場面で国際送金サービスが利用されています。
しかし、従来の国際送金システムは高額な手数料と長い処理時間という課題を抱えており、特に少額送金においてはその負担が深刻です。
このような状況下で注目を集めているのが、仮想通貨を活用した新しい送金システムです。
仮想通貨送金は従来の銀行システムを介さない革新的な送金方法として、国際送金の概念を根本から変える可能性を秘めています。
本記事では、従来の国際送金システムの課題について考え、仮想通貨送金のメリット・デメリットを解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
従来の国際送金システムの課題
従来の国際送金システムの課題として、以下の3つが挙げられます。
- 高額な送金手数料
- 処理時間の長さ
- アクセシビリティの課題
高額な送金手数料
従来の国際送金において最も大きな問題となっているのが、高額な送金手数料です。
世界銀行の調査によると、200ドルの国際送金にかかる平均手数料は約6〜7%程度となっており、送金者にとって大きな負担となっています。
特に発展途上国への送金では、手数料率がさらに高くなる傾向があり、10%を超えるケースも珍しくありません。
この高額な手数料の背景には、複雑な金融システムが存在しています。
国際送金では通常、送金銀行・中継銀行・受取銀行という複数の金融機関が関与し、それぞれが手数料を徴収します。
さらに、為替レートのスプレッド（売買価格差）も実質的な手数料として機能しており、これらが積み重なることで高額な送金手数料が発生するのです。
処理時間の長さ
従来の国際送金システムの2つ目の課題が処理時間の長さです。
銀行間の国際送金では通常3〜5営業日程度の時間を要し、場合によっては1週間以上かかることもあります。
この長い処理時間は、緊急の資金需要に対応できないだけでなく、為替リスクの増大にも繋がるでしょう。
また、処理時間が長い理由として、複数の金融機関を経由する複雑なネットワーク構造・各国の規制に基づく審査プロセス、そして営業時間の制約なども挙げられます。
特に時差の関係で、異なる地域間の送金では処理が断続的になりがちで、さらなる遅延の原因となっています。
アクセシビリティの問題
従来の国際送金システムには、アクセシビリティの問題もあるでしょう。
銀行口座を持たない「アンバンクト」と呼ばれる人々は世界で約17億人存在するとされており、このような人々は従来の送金システムの利用が困難です。
また、地理的に銀行の支店から遠い地域に住む人々にとっても、送金サービスへのアクセスは限定的となります。
仮想通貨送金のメリット
仮想通貨送金の基盤となっているのは、ブロックチェーン技術です。
ブロックチェーンは分散型台帳技術の一種で、中央集権的な管理者を必要とせずに、取引記録を安全かつ透明に管理できます。
ブロックチェーンを利用した送金は取引情報が暗号化され、複数のノード（参加者）によって検証・承認されるので、第三者機関へ依存せず、より安く・早く送金できます。
以下で、仮想通貨送金のメリットを深掘りしていきましょう。
- 大幅な手数料削減
- 処理時間の短縮
- グローバルアクセシビリティの向上
- 透明性とトレーサビリティ
大幅な手数料削減
仮想通貨送金の最大のメリットの一つが、大幅な手数料削減です。
従来の国際送金では複数の金融機関が仲介することで高額な手数料が発生していましたが、仮想通貨送金では中間業者がいないので手数料を大幅に削減できます。
実際の手数料水準を比較すると、従来の銀行送金では200ドルの送金に対して10〜20ドル程度の手数料がかかるのに対し、仮想通貨送金では数ドル以下、場合によっては1ドル未満で送金が可能です。
| 銘柄 | 送金手数料（200ドル送金時） |
| BTC | 0.5%〜5% |
| ETH | 1.5%〜7.5% |
| XRP | 0.00025%〜0.005% |
| XLM | 0.000005%〜0.0005% |
この差は送金額が大きくなるほど顕著になり、企業の国際取引においては数千ドル、数万ドルの手数料削減効果が期待できるでしょう。
処理時間の短縮
仮想通貨送金のもう一つの大きなメリットが、処理時間の短縮です。
従来の国際送金が数日を要するのに対し、仮想通貨送金では数分から数時間で完了でき、営業時間や休日の制約を受けません。
特に送金に特化した仮想通貨を利用すると処理時間はさらに短縮され、リップルの場合は数秒から数分で送金が完了し、ステラでも同様に高速処理が可能です。
| 銘柄 | 送金時間 |
| BTC | 約10分 |
| ETH | 約5〜15分 |
| XRP | 約3〜5秒 |
| XLM | 約3〜5秒 |
また、処理時間の予測可能性も向上しており、従来システムではさまざまな要因で処理時間が大幅に変動することがありましたが、仮想通貨送金では処理時間が比較的安定しているので、送金計画の立案や資金繰りの管理が容易になりました。
グローバルアクセシビリティの向上
仮想通貨送金は、従来の金融システムでは対応困難だった地域や人々への送金も可能にしています。
なぜなら、仮想通貨送金はインターネット接続とスマートフォンがあれば世界中のどこからでも送金が可能で、銀行口座を持たない人々でも仮想通貨ウォレットを通じて送金サービスを利用できるからです。
グローバルアクセシビリティの向上によって、特に発展途上国のような銀行インフラが未発達な地域でも、モバイル決済の普及により仮想通貨送金が利用可能です。
また、政治的・経済的な理由で従来の金融システムへのアクセスが制限されている地域においても、代替的な送金手段として機能しています。
透明性とトレーサビリティ
ブロックチェーン技術に基づく仮想通貨送金は、高い透明性とトレーサビリティという観点でもメリットがあるでしょう。
すべての取引がブロックチェーン上に記録・公開されているため、送金の進捗状況をリアルタイムで確認できます。
そのため送金の不安や不透明さが解消され、より安心して送金サービスを利用できるようになりました。
また、取引履歴が永続的に保存されるため、会計処理や税務申告における証跡管理も容易になり、企業の国際取引においては監査プロセスの簡素化にも貢献しています。
仮想通貨送金のデメリット
仮想通貨送金には上記で解説したメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
以下で、仮想通貨送金のデメリットを4つ解説するので参考にしてください。
- 価格変動リスク
- 仮想通貨送金に対する理解不足
- セキュリティリスク
価格変動リスク
仮想通貨送金における最大の課題の一つが、価格変動リスクでしょう。
多くの仮想通貨は高いボラティリティがあるので、送金期間中に価値が大幅に変動する恐れがあり、送金者が意図した金額とは異なる金額が受取人に届く可能性があります。
そんな価格変動リスクへの対策として、ステーブルコインの活用がおすすめです。
ステーブルコインの中でも特に有名なのはUSDCとUSDTで、どちらもドルに連動して値動きするため法定通貨と同等の価格安定性があります。
そのため、価格変動リスクに対応するには、ステーブルコインを積極的に活用しましょう。
仮想通貨送金に対する理解不足
仮想通貨送金を利用するには、一定の技術的知識が必要です。
特に高齢者や技術に不慣れなユーザーにとって、仮想通貨送金は理解が難しい場合が多くあります。
例えば、ウォレットの設定・秘密鍵の管理・アドレスの確認など、従来の送金方法と比較して複雑な操作が求められ、銀行送金のように窓口に行けば簡単に教えてもらえるわけでもありません。
そのため、送金業者各社はユーザビリティの改善に取り組んでいますが、従来の銀行送金と同レベルの使いやすさを実現するまでには時間を要すると予想されます。
セキュリティリスク
仮想通貨送金には、独特のセキュリティリスクが存在しています。
例えば、送金アドレスの入力ミスをすると誤送金によって資産を失うリスクがありますし、秘密鍵の紛失や盗難によりウォレットにアクセスできないリスクもあるでしょう。
実業家のホリエモンこと堀江貴文氏は、仮想通貨ウォレットの秘密鍵を忘れて仮想通貨を引き出せない状態が続いていると自身のYouTubeで発言していました。
このように、仮想通貨送金をするにあたってセキュリティリスクはユーザーにとって大きな不安要因でしょう。
まとめ｜仮想通貨送金は今後拡大していく
仮想通貨送金は従来システムの高額な送金手数料と長い処理時間という課題を解決できます。
その一方で、価格変動リスクやセキュリティリスクなど小さくないリスクもあり、仮想通貨初心者が一歩踏み出すのに躊躇してしまう現状もあるでしょう。
技術的な課題や規制環境の不確実性などの解決すべき問題は残されていますが、送金革命はすでに始まっており、その影響は今後数十年にわたって拡大し続けます。
今後の仮想通貨送金技術の更なる発展と普及によって、より公平で効率的な国際金融システムの構築が実現されることを期待しましょう。
