仮想通貨の世界では、ビットコインやイーサリアムなどの主要なブロックチェーンが抱えるスケーラビリティ問題が長年の課題となっています。
この問題を解決するために登場したのが「レイヤー2技術」です。
レイヤー2技術は、既存のブロックチェーン（レイヤー1）の上に構築される二次的なネットワークやプロトコルの総称です。
取引の処理能力を大幅に向上させ、手数料を削減することで、ブロックチェーンの実用性を飛躍的に高めています。
本記事では、レイヤー2技術の基本概念から具体的なメリット、注意点、そして代表的なプロジェクトまで、包括的に解説していきます。
仮想通貨投資を検討している方や、ブロックチェーン技術に興味がある方にとって、必須の知識となるでしょう。
仮想通貨のレイヤー2とは？
レイヤー2とは、既存のブロックチェーンネットワーク（レイヤー1）の上に構築される、取引処理能力を向上させるためのソリューション群を指します。
レイヤー2技術の核心的なアイデアは、すべての取引をメインチェーン上で直接処理するのではなく、多くの取引をオフチェーン（メインチェーン外）で実行し、最終的な結果のみをメインチェーンに記録するという点にあります。
これにより、メインチェーンの負荷を軽減し、より多くのユーザーが快適にブロックチェーンサービスを利用できるようになりました。
現在、ビットコインネットワークでは1秒間に約7取引、イーサリアムでは約15取引しか処理できませんが、数千TPS、場合によっては数万TPSの処理能力を示すプロジェクトもあります。
このような取引速度の劇的な改善により、ブロックチェーン技術の日常的な利用が現実的になりつつあります。
レイヤー2で重宝されるロールアップとは
ロールアップは、現在最も注目されているレイヤー2技術の一つです。
以下で、ロールアップの代表例をご紹介します。
オプティミスティック・ロールアップ
オプティミスティック・ロールアップは、「すべての取引が正当であると仮定」して処理を進め、不正が疑われる場合のみ検証を行います。
具体的には、取引データがメインチェーンに送信された後、一定期間（通常7日間）の異議申し立て期間が設けられます。
この期間中に不正が発見されなければ、取引は最終的に承認される仕組みです。
オプティミスティック・ロールアップの代表的なプロジェクトには、Optimism（オプティミズム）やArbitrum（アービトラム）があります。
上記のプラットフォームでは、イーサリアムの仮想マシン（EVM）との完全な互換性を保ちながら、処理速度の向上と手数料の削減を実現しています。
ゼロ知識ロールアップ（zk-Rollup）
ゼロ知識ロールアップは、暗号学的証明技術を活用したより高度なロールアップ技術です。
この方式では、取引の詳細を明かすことなく、その取引が正当であることを数学的に証明できます。
この証明がメインチェーンで検証されることで、取引の正当性が保証されます。
zk-Rollupはオプティミスティック・ロールアップに比べて技術的に複雑ですが、セキュリティレベルが高く、「将来的にはレイヤー2技術の主流になる有力候補と見られています。
現在、Polygon zkEVMやzkSync Eraなどのプロジェクトが実用化に向けて開発中です。
レイヤー2のメリット
レイヤー2技術の導入により、ブロックチェーンエコシステム全体が大きな恩恵を受けています。
特に、長年の課題であったスケーラビリティ問題と高額な取引手数料の問題が大幅に改善されました。
- スケーラリビティ問題の解決
- 送金手数料の低下
スケーラビリティ問題の解決
スケーラビリティ問題は、ブロックチェーン技術の最大の課題の一つとされてきました。
例えばイーサリアムのメインネットワークでは、1秒間に約15取引しか処理できません。
このような制限により、ネットワークが混雑すると取引の処理待ちが発生し、ユーザー体験が大幅に悪化します。
特にDeFi（分散型金融）ブームやNFT（非代替性トークン）の人気により、ネットワーク混雑が頻繁に発生していました。
しかし、現在主要なレイヤー2プラットフォームでは、1秒間に数千から数万の取引を処理することが可能になっています。
| 銘柄 | 処理数値 |
| ポリゴン | 約7,000TPS |
| アービトラム | 約4,000TPS |
| オプティミズム | 約2,000TPS |
具体的な数値で比較すると、イーサリアムのメインネットと比較して100倍から400倍以上の性能向上を意味します。
このような処理能力の向上により、複雑なDeFiアプリケーションやゲーム、NFTマーケットプレイスなどが快適に動作するようになり、ユーザーは取引の遅延を気にすることなく、リアルタイムでブロックチェーンサービスを利用できるようになったのです。
送金手数料の低下
レイヤー2技術のもう一つの大きなメリットは、取引手数料（ガス代）の大幅な削減です。
レイヤー2では、多数の取引を一つの束にまとめてメインチェーンに送信するため、メインチェーンでの取引コストを多くのユーザーで分散できます。
例えば、100の取引をまとめて1回の取引として処理する場合、メインチェーンでのコストは100分の1に削減されます。
レイヤー2ネットワークは、より効率的なコンセンサスアルゴリズムや処理方式を採用しているため、計算処理コストもメインチェーンと比較して大幅に安価です。
| 銘柄 | 手数料 |
| イーサリアム | 50ドル〜100ドル以上 |
| ポリゴン | 0.01ドル〜0.05ドル |
| アービトラム | 0.5ドル〜2ドル |
| オプティミズム | 0.3ドル〜1.5ドル |
このような手数料の削減により、これまで経済的に困難だった小額取引や、頻繁な取引を必要とするアプリケーションが実用的になりました。
レイヤー2の注意点
レイヤー2技術は多くのメリットを提供する一方で、新しい技術であるがゆえの課題やリスクも存在します。
これらのリスクを理解し、適切に対処することが、安全なレイヤー2利用の鍵となるでしょう。
- セキュリティリスクがある
- 未知のバグが発生する可能性がある
セキュリティリスクがある
レイヤー2技術には、メインチェーンとは異なる種類のセキュリティリスクが存在します。
- 信頼性の問題
- スマートコントラクトのリスク
- ブリッジセキュリティ
レイヤー2システムでは、取引処理の一部を少数の運営者（オペレーター）に委ねる場合があるため、メインチェーンの完全に分散化された構造と比較して、一定の中央集権的な要素が生じます。
また、スマートコントラクトにバグや脆弱性が存在する場合、ハッカーによる攻撃の対象となる可能性があるでしょう。
そして、レイヤー1とレイヤー2間で資産を移動するためのブリッジ機能は、ブリッジは大量の資金をプールする構造になっているため、攻撃者にとって魅力的なターゲットとなります。
このようなセキュリティリスクがあることを念頭において、投資判断や利用判断をしてください。
未知のバグが発生する可能性がある
レイヤー2技術は比較的新しい分野であり、長期間の運用実績がないため、予期しない技術的問題が発生する可能性があります。
新しい技術であるため、想定していなかった条件下での動作や、極端な負荷がかかった場合の挙動について、まだ十分なデータが蓄積されていません。
例えば、ネットワークの利用者が急激に増加した場合や、メインチェーンで大きな混雑が発生した場合の影響について、理論的な予測と実際の動作が異なる可能性があります。
このように、レイヤー2はレイヤー1に比べて技術的な問題が発生する可能性が高いと言えるでしょう。
レイヤー2の代表銘柄
現在、数多くのレイヤー2プロジェクトが開発・運用されていますが、その中でも特に注目すべき3つのプロジェクトについて詳しく解説します。
- ポリゴン（POL）
- オプティミズム（OP）
- アービトラム（ARB）
ポリゴン（POL）
ポリゴン（旧称：Matic Network）は、イーサリアムのためのマルチチェーン・スケーリングソリューションとして開発されたプラットフォームです。
2024年9月にネイティブトークンがMATICからPOLに移行され、より包括的なエコシステムの構築を目指しています。
メインのPolygon PoS Chainは、Proof of Stakeコンセンサスメカニズムを使用しており、高速で低コストな取引が可能です。
ポリゴンは、最も成熟したレイヤー2エコシステムの一つとして発展しており、DeFiプロトコルでは、Aave、Uniswap、SushiSwapなどの主要なプラットフォームがポリゴン上で運用されています。
ポリゴンはPolygon 2.0というアップグレード計画を発表しており、このアップグレードでセキュリティの向上と処理能力のさらなる拡大が期待されています。
オプティミズム（OP）
オプティミズム（Optimism）は、オプティミスティック・ロールアップ技術を採用したレイヤー2ソリューションです。
2021年にメインネットをローンチし、イーサリアムエコシステムでの重要なスケーリングソリューションとして確立されています。
オプティミズムの核心技術であるオプティミスティック・ロールアップは、すべての取引が有効であると仮定して処理を進め、不正があった場合のみ異議申し立てプロセスを通じて検証を行う仕組みです。
そのため計算負荷を大幅に削減し、イーサリアムメインネットと比較して約10-100倍の処理能力向上を実現しています。
オプティミズム上では多くのDeFiアプリケーションが稼働しており、特に合成資産プラットフォームのSynthetixは、オプティミズムを活用することで、複雑な金融デリバティブ商品を低コストで提供することが可能になりました。
アービトラム（ARB）
アービトラム（Arbitrum）は、Offchain Labsによって開発されたオプティミスティック・ロールアップソリューションです。
2021年にメインネットをローンチして以来、TVL（Total Value Locked）の面でレイヤー2分野でトップクラスの地位を確立しています。
アービトラムは多くのエコシステムを構築しており、DeFi分野ではGMX（分散型デリバティブ取引所）、Camelot（DEX）、Radiant Capital（レンディングプロトコル）など、革新的なプロジェクトが数多く展開されています。
特に注目すべきはGMXの成功で、アービトラム独自の流動性プールモデルを活用した分散型デリバティブ取引プラットフォームによって、従来のDeFiでは実現困難だった低スリッページでの大口取引を可能にしました。
まとめ｜レイヤー2は仮想通貨の価値を高める
レイヤー2技術は、ブロックチェーン技術の実用化を大幅に前進させる革命的なイノベーションです。
本記事で解説した通り、スケーラビリティ問題の解決と取引手数料の削減により、これまで理論的存在であった多くのブロックチェーンアプリケーションが現実的なものとなりました。
レイヤー2技術はブロックチェーン技術の最終形ではなく、これらの技術進歩により、今後もレイヤー2ソリューションの性能と安全性は継続的に向上していくでしょう。
レイヤー2技術の理解と適切な活用は、変化する仮想通貨・ブロックチェーン分野で成功するための必須スキルです。
技術的な理解を深めながら、慎重かつ積極的にこの革新的な技術を活用していくことで、Web3時代の恩恵を最大限に享受することができるでしょう。
