暗号資産市場において、分散型取引所(DEX)の進化は目覚ましいものがあります。
その中でも特に注目を集めているのが「Hyperliquid(ハイパーリキッド)」です。
従来のDEXが抱えていた課題を解決し、中央集権型取引所に匹敵する使い勝手を実現したこのプラットフォームは、2024年の大規模エアドロップをきっかけに世界中の投資家から熱い視線を集めています。
本記事では、Hyperliquidの仕組みや将来性について、包括的に解説していきます。
Hyperliquid(ハイパーリキッド)とは何か

Hyperliquidは、独自開発のレイヤー1ブロックチェーン上で稼働する分散型デリバティブ取引プラットフォームです。
2022年夏に開発がスタートし、2024年11月29日に正式なトークンローンチを迎えました。
このプラットフォームの最大の特徴は、完全なオンチェーン環境でありながら、中央集権型取引所と同等の取引体験を提供している点です。
従来のDEXでは避けられなかった約定の遅延やスリッページといった問題を、革新的なアーキテクチャによって克服しています。
取り扱う銘柄は170種類以上(2025年7月時点)にのぼり、ビットコインやイーサリアムといったメジャー通貨から、新興のミームコインまで幅広くカバーしています。
現物取引と永久先物取引の両方に対応し、最大50倍のレバレッジをかけた取引が可能です。
オンチェーンオーダーブックという革新
多くのDEXがAMM(自動マーケットメイカー)方式を採用する中、Hyperliquidはオンチェーンオーダーブック方式を実装しています。
これは注文板がブロックチェーン上に存在し、すべての取引履歴が透明に記録される仕組みです。
通常、オーダーブック方式は中央集権型取引所の専売特許でした。
なぜなら、注文の突合や処理に高速な計算能力が求められるためです。
しかしHyperliquidは独自のコンセンサスアルゴリズム「HyperBFT」を開発することで、1秒未満のブロック承認時間を実現しました。
この技術により、ユーザーは指値注文や成行注文を自由に使い分けられ、プロトレーダーが求める繊細な取引戦略も実行可能となっています。
ガス代もほぼ無料に近い水準に抑えられており、少額取引でも気軽に利用できる環境が整っています。
Hyperliquidのメリットと優位性

現在Hyperliquidが注目を集めているのは、多くのメリットがあるからです。
- 本人確認不要の自由度
- 圧倒的な処理速度と低コスト
- 豊富な取引オプション
- HIP-3によって誰でも市場を作れる
本人確認不要の自由度
Hyperliquidでは、本人確認なしでウォレット接続だけで取引を開始できます。
個人情報を提供する必要がなく、プライバシーを重視するユーザーにとって大きな利点です。
中央集権型取引所では、書類提出から審査完了まで数日を要することも珍しくありません。
しかしHyperliquidなら、思い立った瞬間から市場参加が可能です。
世界中のどこからでもアクセスでき、地域制限や規制の影響も受けにくいのが特徴です。
圧倒的な処理速度と低コスト
独自開発のHyperliquid L1ブロックチェーンにより、トランザクションの処理速度は業界トップクラスです。
ブロック承認時間は1秒未満で、注文の約定も瞬時に行われます。
イーサリアムメインネット上のDEXでは、ガス代が数千円から数万円に達することもあるのがデメリットでした。
一方、Hyperliquidのガス代は数円から数十円程度に抑えられており、少額取引でも気軽に利用できる環境が整っています。
豊富な取引オプション
Hyperliquidは170種類を超える通貨ペアに対応し、新興トークンやミームコインまで幅広く取引できます。
国内取引所では扱われていない銘柄にも早期アクセスでき、トレンドを捉えた投資が可能です。
また、流動性提供(Vaults)やステーキングといった資産運用機能も充実しており、取引以外の収益機会も豊富に用意されています。
優秀なトレーダーの戦略をコピーできる機能もあり、初心者でも効率的に学びながら利益を狙えます。
HIP-3によって誰でも市場を作れる
これまで新しい取引ペアの上場は、運営チームの判断に委ねられていました。
しかしHIP-3が実装されれば、開発者が自由に市場を開設し、株式や債券、コモディティなど多様な資産クラスにも対応できるようになります。
市場を立ち上げるには100万HYPEのステークが必要で、不正があった場合はその担保が削減される仕組み(スラッシング)により、信頼性が担保されています。
また、市場開設者は取引手数料の最大50%を報酬として受け取れるため、質の高い市場運営へのインセンティブが働くでしょう。
注意すべきリスクとデメリット

Hyperliquidには、メリットがある一方で注意すべきリスクも存在します。
- レバレッジ取引の危険性
- 過去のトラブル事例
- 日本語非対応
レバレッジ取引の危険性
Hyperliquidは最大50倍のレバレッジが魅力的ですが、その分リスクも大きいです。
暗号資産市場は価格変動が激しいため、予想と反対方向に相場が動いた場合、短時間で証拠金を失う可能性があります。
特に流動性の低い銘柄では、大口注文によって価格が急変動しやすく、ロスカットのリスクが高まります。
経験や知識に応じた適切なレバレッジ設定と、損切りルールの徹底が不可欠です。
過去のトラブル事例
Hyperliquidは2022年の立ち上げからまだ歴史が浅く、いくつかの問題が発生しています。
2025年3月には、トレーダーが時価総額の小さい「JELLY」トークンを使って価格操作を行い、プラットフォーム側が強制的に清算を実行する事態が起きました。
また、2024年12月にはハッキングの標的になっているとの憶測が広まり、一時的に価格が25%下落したこともあります。
分散型を謳いながらも、運営側が市場介入を行った事実は、真の分散化への課題を浮き彫りにしています。
日本語非対応
2025年現在、Hyperliquidのインターフェースは日本語に対応していません。
英語をはじめとする他言語での操作が必要となるため、語学に不安がある方にはハードルが高いでしょう。
また、人気プロジェクトには必ず詐欺サイトや偽トークンが出現します。
公式サイトと酷似したフィッシングサイトに誘導され、ウォレットの秘密鍵を盗まれるケースも報告されています。
Hyperliquidを利用する際は、必ず公式SNSからのリンクを経由し、URLやコントラクトアドレスを慎重に確認する習慣が重要です。
Hyperliquidの将来性と成長可能性

現在、急速にコミュニティを拡大しているHyperliquidですが、今後の成長可能性と将来性はどうなのでしょうか。
以下で、Hyperliquidの将来性について説明していきます。
分散型デリバティブ市場の拡大
暗号資産のデリバティブ取引は、現在も中央集権型取引所が市場の大半を占めています。
しかし、FTXの破綻をはじめとする取引所リスクが顕在化したことで、分散型プラットフォームへの需要が急速に高まっています。
Hyperliquidは、高速オーダーブックと低コスト取引という強みを活かし、この成長市場で重要なポジションを確立する可能性があります。
HIP-3の実装により市場の多様化が進めば、さらに幅広いユーザー層を取り込めるでしょう。
コミュニティ主導の成長モデル
ベンチャーキャピタルの資金を受けずに開発された背景から、Hyperliquidはコミュニティ最優先の姿勢を貫いています。
トークンの大部分がユーザーの手にあり、エコシステムの成長がそのまま保有者の利益につながる構造です。
ステーキングやガバナンス参加を通じて、ユーザー自身がプロジェクトの方向性を決定できる仕組みも整っており、こうした参加型のモデルは長期的な成長と安定を支える重要な要素になり得るでしょう。
HyperEVMとエコシステムの拡張
2025年2月にはHyperEVMのメインネットが立ち上がり、Ethereum互換の開発環境が提供されました。
これにより、開発者は既存のツールやライブラリを活用して、Hyperliquid上でDeFiアプリケーションを構築できるようになりました。
ネイティブ機能(オーダーブックや永久先物)とEVM上のアプリが直接連携できるため、革新的なユースケースの創出が期待されています。
DeFiエコシステム全体の成長とともに、HYPEトークンの需要も増加していくでしょう。
まとめ|Hyperliquidは次世代DEXのスタンダードになるか
Hyperliquid(ハイパーリキッド)は、分散型取引所が抱えていた技術的課題を克服し、中央集権型取引所に匹敵する取引体験を実現した革新的なプラットフォームです。
独自のレイヤー1ブロックチェーンとオンチェーンオーダーブックにより、高速・低コスト・高透明性を同時に達成しています。
HIP-3の実装が進めば、誰でも市場を作れる真の分散型プラットフォームへと進化し、金融インフラとしての地位を確立する可能性があります。
一方で、レバレッジ取引の高リスク性や、歴史の浅さゆえのトラブル事例には注意が必要です。
日本語非対応や詐欺サイトの存在など、利用にあたっては慎重な姿勢が求められます。
暗号資産市場が成熟し、規制が整備されていく中で、Hyperliquidのような分散型プラットフォームの重要性はますます高まっていくでしょう。
コミュニティ主導の成長モデルと技術的な優位性を活かし、次世代DEXのスタンダードとなる日も遠くないかもしれません。
Hyperliquidでの投資を検討する際は、十分な情報収集とリスク管理を行い、自己責任のもとで慎重な判断を心がけることが大切です。

