世界的な仮想通貨(暗号資産)に対する規制緩和への期待から、資金流入が続く仮想通貨市場。ニュースやSNSで毎日のようにビットコインやイーサリアムの価格動向が取り上げられています。
この仮想通貨市場の熱狂に期待を寄せている方も多いのではないでしょうか。
しかし、この熱狂の裏には投資家を惑わす心理的な罠が潜んでおり、時に冷静な判断を鈍らせ、衝動的な高値掴みやリスクを無視した過剰な投資を招く可能性があります。
本記事では、仮想通貨トレードにおける投資心理の危険性と注意点、その回避策について解説します。
この記事で扱う3つの心理的罠
- 機会損失の恐怖(Fear of Missing Out)
- 損切りできない(プロスペクト理論)
- 過信と過剰トレード(Over Trade)
1.機会損失の恐怖(Fear of Missing Out)

どんな罠か?
FOMOは、「自分が参加していない他の場所で、価値ある出来事が起こっているかもしれないという不安」と定義されます。
他者が経験しているであろう価値ある経験に対して不安を感じ、その機会を逃すことへの恐れが生じる心理現象です。
FOMOについて調査した研究によると、「FOMOは、魅力的な代替経験に関する情報を知ることで一時的に引き起こされる感情であり、現在の経験を繰り返したいという意図を低下させ、現在の経験の評価を下げる可能性がある」と指摘しています。
特にSNSの普及により、他者の成功や楽しそうな瞬間が可視化されることで、この感情が増幅されやすく、衝動的な行動や過剰な情報収集に繋がるとしています。
また、FOMOは個人の行動に影響を与えるため、合理的な判断を超えたリスクテイクにつながる可能性も指摘されています。
仮想通貨トレードにおいては、「他の人が儲かっているかもしれない」という情報に触れた際にFOMOを感じることで、十分な分析や検討をせずに感情的な判断で投資してしまう可能性があります。
例えば、ビットコインの価格が急騰している状況を見て「乗り遅れたくない」と感じ、仮想通貨に関する十分な情報を確認しないまま投資することにより、高値掴みしてしまい大きな損失を出すことなどがあります。
また、現在保有している投資よりも魅力的に見える投資案件の情報に触れることで、「このままでは損をするかもしれない」と感じ、既存の投資を売却して新たな投資に乗り換えるという行動に繋がる可能性もあります。
たとえ現在の投資に満足していたとしても、FOMOによってより魅力的な選択肢に心が動かされてしまうのです。
FOMOによって「見逃したくない」という強い感情が生まれると、通常であれば避けるような高リスクの投資にも手を出してしまう可能性があるため、注意が必要です。
回避法
- FOMOの根本的な理解
- 明確な取引ルールの策定
仮想通貨トレード初心者が陥りやすいFOMOは、投資心理に深く根ざしています。他者の利益に焦りを感じ、十分な分析をせずに取引に飛びつくことで、過剰トレードに繋がります。
FOMOを回避するには、まずその根本を理解し、FOMOが「自分が参加していない他の場所で、エキサイティングあるいは面白い出来事が起こっているかもしれないという不安」であり、「SNSやニュースによって頻繁に引き起こされる感情である」ことを十分理解することが重要です。
そして、感情的な取引を避けるために、取引を行う前に「リスク許容度の把握」や「エントリー・イグジットの明確な取引ルール」を事前に策定します。
世の中の動きに過剰に反応せず、いつ、どの価格で売買するのかを具体的に定めることで、ルールに基づいた冷静な判断が可能となり、FOMOによる衝動的な取引を防ぐことができます。
2.損切りできない(プロスペクト理論)

どんな罠か?
プロスペクト理論(Prospect Theory)は、ダニエル・カーネマン氏とエイモス・トヴェルスキー氏の研究によって提唱されました。
この理論では、主に3つのポイントが確認されています。
参照点依存性
人々は「絶対的な富の水準」ではなく、「参照点(現在の状態や期待値)との比較」で意思決定を行います。
損失回避(Loss Aversion)
利益を得る喜びよりも、損失を被る痛みの方が心理的に大きく感じられます。例えば、100ドルを失う痛みは、100ドルを得る喜びよりも大きいと感じる傾向があります。
確率加重(Probability Weighting)
人々は低確率の事象(例えば宝くじの当選)を過大評価し、高確率の事象(例えば99%の成功確率)を過小評価する傾向があります。
回避法
- 参照点の意識を抑制
- 情報リテラシーの向上
仮想通貨トレードにおいて、特に初心者は仮想通貨の購入価格を参照点としがちです。価格が少しでも下がると「損をしたくない」という投資心理が働き、本来であれば損切りすべき場面で持ち続けてしまうことがあります。
逆に、少し利益が出るとすぐに「利益を確定したい」と考え、本来であればもっと大きな利益を得られる可能性を逃してしまうことがあるので、購入価格の短期的な価格変動に固執せず、常に長期的な視点に基づいて判断するように心がけることが重要です。
また、根拠のない情報や過度な楽観論に惑わされず、信頼できるデータや分析に基づいて投資判断を行うことで、自身の情報リテラシーを向上させ、SNSなどの感情的な情報に流されないようにします。
3.過信と過剰トレード(Over Trade)

どんな罠か?
過信(overconfidence)とは、自身の知識、判断力、市場を予測する能力を過大に評価する心理状態です。一方、過剰トレード(Over Trade)とは、客観的な分析や戦略に基づかず、必要以上に頻繁に取引を繰り返すことを言います。
過信は自身の取引スキルが高いと錯覚させ、小さな利益や偶然の成功を実力だと捉えがちです。その結果、「もっと利益を得られるはずだ」と考え、取引回数を増やしてしまう(過剰トレード)傾向があります。
過信と過剰トレードについて調査した研究によると、過信による過剰な取引は、取引コスト(手数料やスプレッド)の増加を招き、結果として投資リターンを悪化させることが示されています。
特に初心者は、市場の変動に一喜一憂し、過信から無計画な過剰トレードに陥りやすいため、冷静な分析に基づいた取引を心がけることが重要です。
回避法
- 徹底的な学習と知識の習得
- 小さな成功に驕らない姿勢
仮想通貨トレードにおいて、特に初心者は仮想通貨市場の急激な価格変動や、少額の投資で大きな利益を得る可能性に魅力を感じやすい一方で、十分な知識や経験がないため、過信と過剰トレードに陥りやすい傾向があります。
そのため、「仮想通貨の基本的な仕組み」、「技術」、「市場動向」などを体系的に学習して知識を習得し、表面的な情報に惑わされないようにすることが重要です。
また、初期の成功は偶然である可能性を考慮し、自身の能力を過信しないように努めます。市場は常に変化することを理解し、常に学び続ける姿勢が重要です。
仮想通貨トレード初心者必見!陥りやすい3つの心理的罠と回避法のまとめ
FOMO(機会損失の恐怖)は、「他で面白いことが起こっているかも」という不安で、SNS等で増幅され、感情的な取引や過剰な情報収集を招きます。
FOMOを理解し、リスク許容度に基づいた明確な取引ルールを定めることで、感情的な取引を回避できます。
プロスペクト理論では、人は参照点との比較で判断し、利益より損失を強く回避する傾向があります。仮想通貨トレード初心者は購入価格を参照点とし、「損をしたくない」心理から下落時に損切りできず、損失を拡大する可能性があります。
回避策として、購入価格に固執せず長期的な視点を持ち、根拠のない情報に惑わされず客観的な分析に基づいた判断が重要です。
過信は自身の能力を過大評価する心理状態で、過剰トレードは根拠なく頻繁に取引を繰り返すことです。
過信はスキルが高いと錯覚させ、過剰トレードにより投資リターンを悪化させます。特に初心者は陥りやすいため、徹底的な学習と知識の習得、小さな成功に驕らない姿勢が重要です。