「DeFiで資産運用すると利回りが高いって聞いたけど、損することもあるの?」
「インパーマネントロスってよく聞くけど、いまいちイメージできない…」
「できる限り損を防ぐ方法はあるの?」
仮想通貨を預けて運用できるDeFiは、魅力的な利回りが得られる一方で「インパーマネントロス(IL)」という損失リスクがあります。
インパーマネントロスは、プールに預けた通貨同士の価格差によって発生し、場合によっては運用益を超える損失になることもあります。
この記事では、インパーマネントロスの仕組みや損失を抑えるための対策方法について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
DeFiリスクを理解し、安全に資産運用したい方は、ぜひ最後までお読みください。
インパーマネントロスとは「プール内の価格差で発生する損失」

インパーマネントロスとは、DeFiの流動性プールに2種類の仮想通貨を預けた際、通貨同士の価格差が変動して発生する損失のことです。
損失が大きい場合は、プールの自動調整によって価格上昇の利益を十分に得られず、保有していた方が結果的に資産額が多くなることもあります。
流動性プールでは、預けた通貨の比率が市場価格に合わせて自動で調整されます。例えばETHとUSDTを同額ずつ預けた場合、ETHの価格が大きく上昇すると、ユーザーが引き出すときのETHの枚数は減り、代わりにUSDTが増えます。
一見すると「枚数が増えているから得した?」と思いがちですが、計算すると単純に保有していた場合よりも総額が少なくなるケースもあります。
なお「impermanent(一時的)」という名前の通り、価格が元に戻ればインパーマネントロス自体は解消されますが、手数料やガス代などのコストは別途発生する可能性があります。
ただし、価格が戻らないまま引き出すとその時点でロスが確定するため、タイミングに注意が必要です。
インパーマネントロスで損する3つの理由

インパーマネントロスは、流動性プールに預けた通貨ペアの価格差によって発生する損失です。
価格が元に戻れば損失は消えますが、引き出すタイミング次第ではロスが確定し、結果的に資産を減らす原因になります。
つまり、価格差が大きくなるほど損失が膨らみ、場合によっては利回りで得た利益を上回ってしまうということです。
そのため、高い利回りに惹かれて運用を始めても、仕組みを理解していないと結果的に資産を減らしてしまうリスクがあります。
ここでは、インパーマネントロスが発生して資産が減ってしまう3つの理由について解説します。
- 価格差が大きいと損失も大きくなるから
- 差額は引き出した時点で“確定損”になるから
- 損失が運用益を超えて元本割れすることがあるから
それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
価格差が大きいと損失も大きくなるから
インパーマネントロスは、預けた通貨ペアの価格差が広がるほど損失が大きくなります。
これは、どちらか一方の価格が大きく変動すると、流動性プールの自動調整によって保有比率が偏り、結果的に資産の総額が減ってしまうためです。
価格差が小さいときのロスはごくわずかですが、変動幅が大きくなると損失は一気に拡大します。
例えば、片方の通貨が20%変動した場合よりも、50%変動した場合の方がロスは急激に大きくなります。
値動きの激しい通貨ペアでは、この変化が数日で起こることも珍しくありません。
そのため、高い利回りだけを見てプールを選ぶのではなく、通貨同士の価格変動リスクを事前に把握し、想定以上のロスが出ない組み合わせを選ぶことが重要です。
差額は引き出した時点で“確定損”になるから
通貨を預けている間に発生するインパーマネントロスは、あくまで「評価上の損失」です。
価格が回復すればその損失は消えますが、回復前に引き出せば、その時点の差額が確定損となり、取り戻すことはできません。
このため、引き出すタイミングは運用成績を左右する重要な要素です。
一時的な下落であれば価格が戻るまで待つことでロスを軽減できますが、長期的な下落トレンドでは逆に損失が拡大する前に撤退したほうが良い場合もあります。
「価格が戻るのを待つ」か「早めに損切りする」かの判断は、通貨の特性や市場の状況を見極めながら行うことが大切です。
損失が運用益を超えて元本割れすることがあるから
価格変動によるインパーマネントロスが、利回りや手数料収入を打ち消してしまうことがあります。
つまり、利益より損失が大きくなり、元本割れする可能性があるということです。
特に、高利回りのプールほど価格変動の大きい通貨ペアが多く、ロスも大きくなりやすい傾向があります。
「これだけ増えるなら安全」と思っても、価格下落による損失が先に利益を消すケースは珍しくありません。
運用を始める際には利回りだけで判断せず、価格変動や損失の可能性も考慮しましょう。その上で、減っても困らない金額で投資することが重要です。
【具体例】ETHとUSDTを預けた場合で解説

インパーマネントロスは、具体的なケースで考えると仕組みがより理解しやすくなります。
ここでは、ETHとUSDTを同じ額だけ流動性プールに預けた場合、価格変動によって通貨の配分や利益がどう変化するのかを見ていきましょう。
具体的には、以下の3つのポイントが分かります。
- 価格が上がるとETHが減って利益が小さくなる
- 価格が下がるとETHが増えて含み損が出やすくなる
- 値動きが大きいと損失が確定しやすくなる
それぞれについて、詳しく解説していきます。
価格が上がるとETHが減って利益が小さくなる
ETHとUSDTを同額ずつプールに預けている場合、ETHの価格が上昇すると、プールの自動調整によってETHの枚数が減り、USDTの枚数が増えます。
これはプール全体のバランスを保つための仕組みです。
その結果、ETHをそのまま保有している場合よりも利益が小さくなることがあります。
具体例を基にして、利益の変化を見ていきます。
1ETH=2,000USDTのときに、1ETHと2,000USDT(合計4,000USDT相当)を預けます。
その後、ETHの価格が4,000USDTに上がった場合に通貨の配分や利益はどうなるでしょうか?
プールでは、常に「ETHの総額=USDTの総額」になるように調整されます。
また、1ETHの価格は「USDT数量 ÷ ETH数量」で決まります。
この条件を満たすと、価格上昇後の配分は図表1のようになります。
図表1
価格上昇前 | 価格上昇後 | |
ETH数量 | 1枚(2,000USDT相当) | 約0.707枚(約2,828USDT) |
USDT数量 | 2,000USDT | 約2,828USDT |
合計額(USDT換算) | 4,000USDT | 約5,656USDT |
もしそのまま保有していた場合は、以下の通りです。
- ETH:1枚(4,000USDT相当)
- USDT:2,000USDT
- 合計:6,000USDT
つまり、プールに預けた場合は約344USDT分の利益を取りこぼすというわけです。
このように、価格が上がるとETHが減って利益が小さくなります。
価格が下がるとETHが増えて含み損が出やすくなる
ETHの価格が下がったときには、上昇時と逆の変化が起こります。同じように具体例を見ていきましょう。
1ETH=2,000USDTのときに、1ETHと2,000USDT(合計4,000USDT相当)を預けた場合、価格下落後の配分は図表2のようになります。
図表2
価格上昇前 | 価格上昇後 | |
ETH数量 | 1枚(2,000USDT相当) | 約1.414枚(約1,414USDT) |
USDT数量 | 2,000USDT | 約1,414USDT |
合計額(USDT換算) | 4,000USDT | 約2,828USDT |
もしそのまま保有していた場合は、以下の通りです。
- ETH:1枚(1,000USDT相当)
- USDT:2,000USDT
- 合計:3,000USDT
つまり、プールに預けた場合は約172USDT分、資産が少なくなることになります。
このように、価格下落時はETHが増えても価値が下がるため、含み損が出やすくなるのがインパーマネントロスの特徴です。
値動きが大きいと損失が確定しやすくなる
インパーマネントロスは、通貨ペアの値動きが大きいほど発生しやすく、しかも損失が確定する可能性も高まります。
価格変動が大きいと、短期間でプール内の通貨配分が大きく変わり、元の価格に戻る前に引き出さざるを得ない状況になることがあるためです。
例えば、ETHとUSDTを預けていて、ETHの価格が急騰または急落した場合を考えましょう。
価格が大きく動くと、預けたときとはまったく違う配分で通貨を引き出すことになり、その差額が損失として確定します。
特に、資金が必要になったときや急な市場変動に備えて引き出す場合は、このリスクが高まります。
このため、値動きの激しい通貨ペアを扱う場合は、短期的な価格変動でも損失が確定する可能性があることを理解しておくことが大切です。
損を減らすには?インパーマネントロスの対策3選

インパーマネントロスを完全に避けることはできませんが、事前の工夫次第では損失を最小限に抑えることができます。
特に初心者の場合は、リスクを理解したうえで運用方法を選ぶことが重要です。
ここでは、インパーマネントロスのリスクを軽減するための具体的な対策方法を3つ紹介します。
・価格が安定した通貨ペアを選ぶ
・長期で預けて短期の価格変動を避ける
・利回りより損失額が小さいかを事前に確認する
それぞれの対策について、詳しく解説していきます。
価格が安定した通貨ペアを選ぶ
インパーマネントロスは、通貨同士の価格差が大きいほど損失が増えます。そのため、対策のひとつとして有効なのが価格変動の少ない通貨ペアを選ぶことです。
代表的なのは、ステーブルコイン同士のペアです。例えばUSDTとUSDC、DAIとUSDTなどは、どちらも米ドルとほぼ同じ価値を保つため、価格差が大きく開きにくく、インパーマネントロスの発生リスクを抑えられます。
一方で、ビットコインやイーサリアムなどボラティリティの高い通貨同士を組み合わせると、短期間で価格差が大きく動き、ロスが膨らむ可能性が高まります。
安定した通貨ペアは利回りが低めになる傾向がありますが「資産を大きく減らさない」ことを優先するなら、安全性の高い選択肢です。
長期で預けて短期の価格変動を避ける
インパーマネントロスは、短期間の急な価格変動で発生しやすい傾向にあります。そのため、短期の値動きに左右されにくい長期運用を前提に預け、損失を抑えるようにしましょう。
例えば、ETHとUSDTを預けた場合でも、数日~数週間単位で見ると価格が大きく上下することもありますが、数か月~1年といった長期では、一時的な変動が落ち着くケースもあります。
価格が元の水準に戻れば、インパーマネントロスは解消されます。そのため、慌てて引き出さずに時間をかけるようにしましょう。
ただし、長期運用には市場全体の下落や急変動のリスクも伴うため「資金をすぐ使う予定がないこと」や「長く預けても安心できる通貨ペアかどうか」を事前に確認しておくことが重要です。
利回りより損失額が小さいかを事前に確認する
インパーマネントロスは、利回りで得られる報酬よりも損失額が大きくなると、結果的に元本割れにつながります。
そのため、運用を始める前に「想定される損失」と「得られる利回り」のバランスを確認することが重要です。
具体的には、過去の価格変動データを参考にして、価格差が一定幅動いた場合のインパーマネントロスを試算します。
その結果とプールが提示している年間利回り(APY)を比較し、利回りが損失を上回る見込みがあるかをチェックしましょう。
一部のDeFiサイトや計算ツールでは、通貨ペアを入力するだけでロスの目安を自動で計算できます。
事前にこうしたシミュレーションを行うことで「高利回りに見えても、実は損をする可能性が高い」プールを避けられるようになります。
インパーマネントロスを恐れず、DeFiで資産を増やそう

インパーマネントロスは、DeFi特有のリスクとして避けて通れません。ただし、仕組みを理解して適切な対策を取れば過度に恐れる必要はありません。
- 価格が安定した通貨ペアを選ぶ
- 長期運用を意識する
- 事前に損失シミュレーションを行う
などの工夫をすれば、リスクを抑えながら運用できます。
特に、利回りとリスクのバランスを意識することで「損する可能性が高いプール」ではなく「着実に資産を増やせるプール」を選ぶことが可能です。
また、少額から始めて経験を積むことで、実際の値動きやロスの発生感覚をつかみやすくなります。
DeFiは高い利回りが魅力ですが、それ以上にリスクを理解して行動することが成功への近道です。
正しい知識と運用戦略を身につけ、インパーマネントロスと上手に付き合いながら資産形成を進めていきましょう。